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あら、こんなこと書いてたのね…

 当地では、もう一、二週間前からあちこちで田んぼの作業が始まり、これまであまり人影もなかった田んぼばかり広がる風景に、にぎわいを感じるようになりました。
 ワタクシ相変わらずなかなか田んぼの方に時間が割けない日々が続いています。あまりのんびりもしていられないのですけど…

 パソコンのファイルを整理していて、以前にある団体の会報に掲載された自分の文章を見つけました。
 あら、こんなこと書いてたのね~~って感じなのですが。
 で、近ごろこのぐうたらブログ、更新が滞りがちなので、この文章を転載してつないどこぉ~ってわけでもない(こともないか)、、、今年もまた稲作を始めるにあたって気持ちを新たにすべく…ってことで、ま、おヒマでしたらこの駄文をご覧ください。

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(東日本大震災の直後、2011年3月下旬の文章。前文略)
 約一年前にこの紙上に私の拙文を掲載していただきました。その折には、私が使用している「自然生態系耕土」という肥料とお米の品種「豊(ゆたか)コシヒカリ」について、少しだけ触れました。このどちらも生みの親は企業や研究者ではなく、ひたすらに農に向き合ってきた一お百姓さんなのです。お二人とも昭和ひとけた世代、前者は後藤清人さん、80過ぎのおじいちゃん、後者は井原豊さん、残念ながら既に故人となられています。今回は井原さんについて少し触れたいと思います。
 井原さんがどのような百姓だったのか、どんな業績を残してきたのかについては、農文協という出版社から、追悼集も含めて多くの本が出版されていますので、関心のある方は出版物をご覧になってください。
 まず井原さんといえば「への字稲作」です。「へ」とは稲の生長をグラフに表した時の生育曲線を表しています。これは著名な農学者で稲作理論の権威、松島省三さんの「V字理論」に対抗するロジックでもありました。(「V」をひっくり返すと「へ」だし、「へ」の音の響きも井原さんらしいアイロニーを感じます!)
 への字の曲線は、私たち人間もそうですが、誕生してから徐々に生長の度合いを増して行きある時点でピークを迎え、以後はゆっくり下降して老化しその一生を終えます。いわば生物にとってはきわめて自然な現象を表しています。
 一方、V字も生育曲線を表しているのですが、稲という対象に対して、人間にとっての最大限の効果を引き出すための技術として、稲の生長に対する人為的なコントロールを施したことによって現れる生育曲線なのです。それは、急激な生長を促した後、ピークを迎えようとしている頃に、今度はまったく逆に、生長を急激に落とし込むというものです。結果沢山のお米が穫れるという技術です。この技術はお米の増産が叫ばれていた昭和30年代に出てきたものですが、以後現在に至るまでその技術の恩恵にあずかってきた生産現場がある一方、批判もまた少なからずありました。
 私自身は農学部で「低投入稲作」を提唱された橋川潮先生の講義を受け、V字理論は沢山の肥料など資材を必要とし、稲という植物の自然本来の生長からかけ離れた技術の負の面を学びました。低投入とは、田んぼに肥料などの物質と労力などのエネルギーを極力投入せずに、稲の持つ潜在的な能力を最大限に引き出して増収を目指すという、省エネ、環境保全を目指すことを意味します。肥料や畜糞堆肥、農薬といった農業資材、あるいは排出物やエネルギー消費の大きい農業機械や設備が、環境汚染を引き起こしている現実は見過ごすことができないほどで、なにしろ、自然と触れ合う健康的なお仕事=農業というイメージとはかけ離れた、環境負荷の高い「産業」なのですから。(農業の近代化によって生じた負の結果の反省から有機農業や自然農法などが注目をされてきたんですよね)百姓・井原と学者・橋川、それぞれの方向性は近く、異なる立場ながら各々の道を究めていかれ、交流のあったお二人は、時に互いに学び合うような場面もあったようです。
 への字とV字、どちらが正しいとか間違っているとか、判断は容易ではないと私は思います。よりたくさん、よりおいしく、より安定的に、そして農家がより豊かに・・・井原さんも松島先生もともに真摯に目指したものに大きな違いはないと思います。稲作は、いわば不思議に満ち溢れています。人が肥料などやらずほとんど手をかけずとも、二俵三俵と、お米は意外に穫れるのです。水田というのは非常に生産力の高い装置なんです。熱帯原産の稲が、温暖なこの東海地方より東北や北陸で沢山とれ、しかもおいしい。それはお米を主食にした日本人の先人たちの長い年月にわたるあくなき努力の賜物でもあるのですが、そもそも稲という植物のもっている力、畏るべしです。このような稲と稲作に向かう時の哲学の違いなのかと、これはもう、そう思うばかりです。
 井原さんの名を冠した「豊コシヒカリ」、これは彼がコシヒカリを栽培しながら、その中から18年の歳月をかけて選抜育種した稲です。DNAを分析するとコシヒカリとまったく同じ検査結果が出るのですが、耐病性と耐倒伏性を改善し、食味もコシヒカリと変わらない、あるいはそれ以上の品種を生み出したのです。特別な学もなく、地位も名もなき大衆の中に、百姓であることに誇りをもち、情熱をもって農の道にうちこみ、深い洞察力を持って不可思議な自然に立ち向かい、まったく新しい素晴らしいものを生み出す、そんな人々に私は強く惹かれるし、ただただ尊敬の念を抱くばかりです。
 未曾有の震災によって、被災地では有形無形のあらゆるものが無に帰されてしまったように感じます。形のない、生活・労働の中で培われてきたその土地々々の人々の知恵、文化などなど、失われ永久に復元しえないものがあるやもしれません。私自身が百姓として、井原さんや後藤さんのように、また、あまた無名の人々のように、次の世代に引き継がれる価値のある何かを生み出すような自信は、とてもありませんが、今年も豊コシヒカリを育てながら、それら民衆の系譜の最末端にかろうじてでも繋がっていたいと思うばかりです。

 * * * * * *

今年、2014年もまた「豊コシヒカリ」、
作りまっせ!


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プロフィール

ふき村・黒田農園

Author:ふき村・黒田農園
知多半島の真ん中、武豊町冨貴(ふき)地区で有機農業をやってます。
「一人農業」で畑も田んぼも…農薬や化学肥料を使わず日々キリキリ舞いしながら、でも適当に手を抜きながら?「ぐうたら」と開き直って、少しでもおもしろおかしく暮らしたいな…。
・・・と呑気な「一人農業」から一転、現在は3人の農業研修生を受け入れ、日々にぎやかに奮闘中?!
★連絡先はホームページにて
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